IPH工法(IPHシステム)とは
長期耐久増強対策システムです。
地震被害等を受けたコンクリート構造物の復旧や、既設構造物のひび割れ補修・改修方法として多用されている、自動式低圧樹脂注入工法の一つです。
一般的な工法は、コンクリート表面のひび割れ位置から樹脂を注入するため、微細クラックへの充填度合に不安定要素を含みます。それに対しIPH工法(IPHシステム)の場合は、注入器取り付け位置を穿孔し、コンクリート内部から高流動の樹脂を低圧で注入することで、植物の葉脈すべてに水分や養分が行きわたるようなイメージの高密度な充填が可能です。
そして樹脂を球状に拡散させる事で鉄筋周囲の注入密度が高まり、防錆増強効果が得られます。
特徴
- 注入用のエポキシ樹脂が高流動であることから、建築改修共通仕様書で0.4N/mm²以下と定められている注入圧力が0.06N/mm²の安定した低圧であり、毛細管現象も活用しながら、より自然な注入ができます。
- 同上の要素から、構造物内部の微細クラックへ注入・充填も0.01mm幅迄可能です。
- 微細クラック末端への充填効果により、新設時の設計強度よりも部材の耐久性が向上することも期待されます。
- 微細部への充填効果から、構造物のみならず建築物の止水工法としても期待できます。
- 樹脂漏れ防止セメントペーストの配合成分が内部鉄筋まで確実に浸透し、鉄筋の防錆効果とコンクリートの再アルカリ化を図り、長期に亘り中性化抑制効果を持続します。二重のケア。
- 透明度の高いカプセルを使用しておりますので、注入状況や注入量が目視確認できます。
用途
土木・建築あらゆる分野のコンクリートやモルタルのひび割れ補修・補強及び止水。剥落防止対策。
土木
ダム、堤防、トンネル、擁壁、橋梁、橋脚、床版、軌道、地下鉄
建築
基礎、外壁、タイル下地
調査~施工手順
劣化・損傷調査
表面状態をVDRで研掃後、目視及び打音検査確認。
狭小部・暗部はカメボーを使用し損傷を測定。
狭小部・暗部はカメボーを使用し損傷を測定。
調査票作成
ひび割れ及び断面欠損分布図を作成。
施工計画書作成
工法の決定。材料及び設計量の決定。
下地処理
ひび割れ周辺をVDRダイアモンド吸塵システムで研磨し、脆弱部を除去する。
欠損部の補修(IPH#700による整形)。
欠損部の補修(IPH#700による整形)。
穿孔
・必要注入カプセル取付け位置にマーキングを施しIPHミストダイヤで穴あけ。
・無振動低騒音型(深さ50mm程度)
・無振動低騒音型(深さ50mm程度)
台座取付
注入台座を取付ける。漏水部には、ホルダー取付を行う。
ひび割れシール
全てのひび割れ部と台座周りに、液漏れ防止シールを施す。
注入カプセル取付・注入
ミクロカプセルによる、エポキシ系樹脂の注入。
撤去・清掃
注入カプセル及び液漏れ防止シールを撤去。
表面仕上げ
無機系通気型撥水塗料 セラブレンドP-5000(不燃認定材)等により仕上げ。
エポキシ樹脂注入状況
【JR 軌道高架橋桁下部補修】
・昭和4年竣工の阪和線高架橋補強工事
・縦梁の水平下部及び垂直面へのミクロカプセル注入状況
注入完了後の抜き取りコア(柱部)
L=250mm
高流動のエポキシ系注入材(E-396)が注入されており、エアー混入も無く高い密度で充填されている。
震災復旧工事
【山陰新幹線高架橋中層梁】
中層横梁の損傷状況(梁幅W=700mm)
水平上下部及び垂直面へのミクロカプセル注入状況
補修イメージ図
調査機器及び使用機械工具等
事前調査
目視調査が困難な狭隘・暗部・水中でも、照明用LED付きカメラが抜群の機動性を発揮します。
カメボー JSN-1200
照明付クラックルーペ 拡大率7倍
下地処理(VDR吸塵型サンディング装置)
粉塵を出さない快適な作業を可能。
VDRダイヤモンド吸塵システム
VDRカッター用
VDRポリッシャースケルトン
- ディスク面8か所の穴から同時に削粉を吸塵し、外部への粉塵を防止します。
- あらゆる塗装材、ライニング材に対応できる、6種類のディスクを用意しております。
穿孔(IPHミストダイヤ)
無振動、低騒音で快適作業を実現。
IPHミストダイヤ
穿孔作業と同時に、孔内の削粉や粉塵を吸塵します。
注入(ミクロカプセル)
ひび割れ補修個所への超低粘度エポキシ樹脂の注入。
ミクロカプセル
最大注入圧力0.06N/mm2
- スプリングによる低い圧力で、ゆるやかな注入ができます。
- 注入液容器はキャプコンを使用しますので、ミクロ本体は繰り返し利用できます。
- カプセルは透明度が高く、注入量等が目で確認できます。